失う時

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「みく……?大丈夫か…?」 「………。」 「みく……?」 うつ伏せにふさぎこんだ彼女の背中に手を添えた、その時だった 「汚い手でさわんないで……」 咳き込む彼女は、小さな途切れそうな声でそう言った…。 ナースコールを押す細い指が、震えていた…。 「どうしました?」 看護婦の声が病室に響く 「く……苦しいの………。」 そう言って彼女は、更に咳き込んでいた。 さしのべる手がない… 俺の手は汚いんだ…。 「汚い…」と言われたショックからか…俺はどうすることも出来ずに、ベッドの横に立ちすくんでいた。 部屋のドアが激しく開いて、看護婦とさっきの医者が入ってきたが、俺には彼女の小さく丸まった背中しか目に入らなかった。 「今日は帰ったほうがいい…。」 さっきの医者が俺にそう言って、うつ伏せの彼女をゆっくりと動かし仰向けに寝せた。 彼女のパジャマの胸ボタンを何個か開けて聴診器で胸の音を聞くその医者に嫉妬が爆発した… 「なにやってんだよっっ!!! さわるなっっ!!」 言った後で… バカラシイ自分の発言に 恥ずかしさがこみあげてきた… 医者が診察するのは当たり前なのに…… 俺はどうかしている…
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