失う時

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たかがパジャマのボタンを外す医者に嫉妬するなんて… それに… それ以上のものを こいつはゆうべ見たんだ… 裸で女と抱き合ってる俺を…。 どれぐらいのショックを受けただろう… もし彼女がこの医者とそんなことしてたら、 俺なら許せない…。 きっと彼女も… 俺を許せないだろう… 力が抜け、放心した。 もう…終わりだ…。 取り返しはつかない…。 病室をそっと後にした俺は、 歩くことだけで精一杯だった。 廊下の向こうがわに見える自動販売機の灯りが… なんだかやけに切なくさせた。 失うって… こんなに辛いもんなんだ… 温もりは、まだ覚えているのに…。 後悔は日に日に増していくかもしれない… この恋は 俺の人生だった。 そう言っても過言じゃない… 明日の俺は今日より大きな後悔を感じることになるだろう。 静かな病院の廊下に 重い足音だけが、響いていた。
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