失う時

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「帰れって言う?」 「………」 「言わないでね…」 そう言って俺に抱きついてきた恵里菜を正直かわいいと思ってしまった。恵里菜の髪のいい匂いがやけに俺を興奮させた。 あれほど別れた事を後悔した俺が、今は恵里菜に欲情している。 別れた彼女の事を完全にふっきれたわけでもないのに、俺は調子がよすぎるかもしれない。 なのに確実に恵里菜の存在は俺の中ででかくなっていく。 いつか彼女に言った約束を思い出しながら、自分に矛盾を感じていた。 ずっと一緒にいる あの時彼女にそう言ったのに、 俺はこれから恵里菜に恋をするんだろうか… いや… すでに始まっているんだろうか… 俺は約束ひとつ守れない ちっちゃい男なのかもしれない。 でも、いくつかの恋愛を重ねて、永遠を願いたくても、永遠が無いことは実感してきた。 恋愛の上で交される約束は、願いであって現実にするのは難しいのかもしれない。 人の気持は移ろっていく…。 それは紛れもない事実だ。 あの約束を思い出しながら、 移ろっていく自分の気持に寂しさを感じていた。 裏切りで壊した愛は、 もう元には戻らないだろう…。 あいつを手放した喪失感と、 恵里菜に対する衝動の狭間で、 俺は恋に寿命ってやつがあることを知った。
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