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一平に抱かれた後に、このベッドに眠る
罪悪感は日に日に増していく。
考えれば考える程、眠りが遠のいていった。
ベッドをそっと抜け出して、キッチンへ向かった。
冷たいミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出し
一気に飲み干した。
リビングのソファーに脱ぎ捨ててある翔太のスーツを
見ながら、ふと思った。
あたしはもう翔太にとって女ではない。
翔太もあたしにとって男ではない・・・。
あたしは翔太の「身の回りの世話」をするだけの
ただの同居人だ。
脱ぎ捨てたスーツを手にとってしわ伸ばした。
微かに匂う翔太の匂いが、あたしの神経を悲しく伝わっていく。
その時、テーブルの上に無造作に置かれた翔太の二つ折の財布に
視線が移った。
結婚当初、あたしがプレゼントしたものだ。
小銭入れのボタンが外れているのか、財布がうまく二つ折になっていない・・・。
札入からは赤い色の半券のようなものがはみ出していた。
翔太は時々こうしてだらしない。
財布を手に取り、小銭入れのボタンを閉めた後で、
赤い半券をしまおうと指で掴んだ。
しかし鮮やかな赤色に
一瞬興味をもったあたしは
一旦はしまおうとした
半券を財布から取り出した。
その半券は割引チケットのようだった。
あたしの目に「30パーセントOFF」と書かれた
大きいな文字が飛び込んできた。
その下には、小さな文字でなにやら説明が書かれている。
会員様限定キャンペーン中。
チケット有効期限XX月XX日。
このチケットを受付にお渡し下されば、
延長料金を30パーセントOFFに致します。
「CANDY BODY」
その、店の名前と、延長という言葉の響きで
はっとしてチケットを裏返した。
チケットの裏には、
あたし達が住むこのマンションからそう遠くない風俗街の住所が書かれてあった。
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