悲しいサプライズ

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「眠れないの?」 「うん・・・眠れない・・・。」 「暗いのがいや?」 「そうじゃなくて・・・、点滴についてるこの機械が、 赤く点滅するでしょ?それが気になって眠れない・・・。」 「看護婦さんに言って、機械はずしてもらう?」 「はずしてくれないよ。何回も言ったけど、点滴を正確に血管に送るためには つけとかなきゃいけないんだって・・・。」 「ふーーん、そうなんだ・・・。 あぁ、ポタポタって点滴が落ちるときに機械のランプが光るんだな。」 「うん・・・・。昼間は気になんないけど、夜は部屋が暗いから、 やたらと目についてやなの。」 「いいから目閉じろよ、閉じたら気になんないだろ?」 「でも、音がする・・・・、それもいや・・・・。」 「音?音なんてしないじゃん。」 「するよ・・・低い音。機械が動いてる音・・・。」 「じゃあ隣で眠ってもい?俺が隣に寝たら、狭くて逆に眠れない?」 「そんなことない・・・・。隣に、きてよ、一緒に眠りたい・・・。」 消灯した病院の一室で、私達はヒソヒソと声を忍ばせて夜更かししていた。 病気が悪化してから、希望したわけじゃないのに個室に移されてしまった。 毎晩、一人きりで眠る病室は、暗くて怖い。 まだ、四人部屋のほうがましだった。 他の患者さんの寝息やいびきは聞こえるけど、 逆にそれが安心できて好きだったのに、点滴の交換が頻繁だから他の患者さんを起こしたらいけないとかって理由をつけられて、個室に追いやられてしまった。 それが本当の理由じゃないことくらい分かってた。 彼氏の一平は仕事があるから、週末しか面会には来ない。 平日は面会時間が終わるまでに仕事がかたずかないらしい・・・。 週末だけの一平の顔・・・。 唯一、私が気を抜ける一平の腕の中…。 治療の辛さからか、 一平に会えたうれしさからか、 髪を撫でながら私を抱き締めてくれると、 いつも泣きそうになる…。 だけど一平に心配かけたくなくて泣いてるのを気づかれないように毎回必死に涙をこらえる。
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