危険人物

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  カタカタと、キーボードで文字が打ち込まれる音。 閑散とした部屋。 窓が開け放たれているが、深夜なので暗い。 光るものはといえば、今俺の目の前にあるコンピューターのディスプレイのみだ。 眠い。 しかし、研究結果の報告書類を、明日までに仕上げねばならない。 俺は目を擦り、傍らに置いてあるコーヒーを一口啜った。 正直、今の仕事は楽しくもなんともない。 毎日出勤先のデスクに座りっぱなしでネットサーフィンを駆け巡り、集めてきたデータをグラフにしたりレポートにしたり。 仕事が終わればそそくさと家に帰り、自宅のコンピューターで次の仕事の資料の下調べ。 寝る時間は毎日2時を回る。 寝不足で目の下に大きな隈が出来ているのにこの間気付き、ややショックを受けた。 こんな感じで俺、何となく生きて何となく死んでいくのかな。 俺はディスプレイに目を向けたまま、またコーヒーカップに口を付ける。  
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