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「あ、来た」
なんだか気の抜けたような声を出して樹と海斗を迎え入れたのは、1-C組、佐藤拓人【サトウタクト】である。
「やぁ、タク。本当に出ないの?クラス対抗超能力向上対戦」
少し残念そうに口を開いた樹に対して拓人は笑顔で答える。
「うん。今回はいいかなって。だって、樹もカイも出るからね」
「!!カハァ!!」
拓人の笑顔を直視した海斗が唐突に地面に崩れ落ちる。
「??カイ?どうしたの?大丈夫?」
突然倒れた海斗を心配そうに見ながら拓人が言う。
「あぁ、大丈夫だよ。カイはバカだからね」
サラっとひどいことを口にする樹。心の中で、「タクのことになると、ね」と呟く。
「本当に?だったらいいや」
樹の言葉に安心したのか拓人は海斗から視線を上げる。
「あぁ、もう俺、死んでいいかも」
樹の足下でブツブツと海斗が呟いている。
そんな幸せ真っ只中の海斗をほっとき、樹は話しを進める。
「やっぱり出ないの?出てくれれば助かるのに」
またも残念そうな顔をして樹が言う。
「あはは、僕が出なくても勝てるよ」
笑顔を崩さずに拓人は答える。
「でも……」
急に真剣な表情になり、拓人が付け加えるように言葉を途中で切る。
「さすがに2-B、3-Aとするときは出るよ」
拓人の言葉を聞いて樹が顔をパアッと輝かせる。
いつの間にか立っていた海斗も嬉しそうな表情をしている。その右手は拓人に見えないようにガッツポーズをしている。
「頼りしてるよ、LV10、重力使い【グラビティマスター】佐藤拓人」
樹がそう言うと、拓人は、なぜか自慢気に胸を張って口を開く。
「樹、カイ。実は僕、LV11認定されたんだ」
その言葉に当然二人は驚く。なんといってもLV11だからだ。
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