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「やめろ、その呼び方。キモチわりぃ」
直樹が不快感を顕にした顔で春香に言う。
「だったら、直樹でいいわね?」
そんな学園都市第一位の人物に対して、春香は、全くの余裕顔で対応している。
「好きにしろ。で……テメェもあの三人の偵察か?」
春香と一緒に歩き始めた直樹は、後ろを振り返らずにそんなことを聞く。
「えぇ。一応、私はあの三人には一目置いているの」
あの三人とは先程、瞬間移動をした樹、海斗、拓人のことだろうか。
「あぁ。柊樹、松原海斗、佐藤拓人は1-Cの中ではずば抜けているからな。それに……決勝で、あいつらのところと闘り合うことになるだろうからな」
直樹は何故か、嬉しそうに語っている。
その横顔を後ろから見ていた春香が不思議そうな顔をして口を開く。
「珍しいわね、あなたがそんなに饒舌になるなんて」
その表情は嬉しそうに軟らいでいる。
「はんっ。いつも通りだよ。それよりも、テメェもそんな表情になるなんて珍しいな」
これまた、嬉しそうな顔のまま、直樹は春香に言った。
「気のせいよ。あら、もう着いたのね、残念」
全く残念さを感じないような表情で春香が呟いた。
聖条学園に着き、直樹と春香は互いに言葉を交わして別れた。
聖条学園、一年校舎前廊下。
「あら?あなたは、佐藤拓人ではなくって?」
廊下を歩いていた春香の視界に拓人が映った。
春香は興味本位で拓人に話しかける。
「あなたは、確か……北川春香先輩。僕に何か用でしょうか?」
声をかけられた拓人は記憶を探り、顔と一致した名前を呼ぶ。しかも、丁寧に敬語である。
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