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「あら、誰かに会うのに用事が必要なのかしら?」
拓人の言葉に春香は表情を笑顔に固定したまま、話す。
「まぁ、大体はそうだと思いますけど」
拓人は特に迷う様子もなく、上級生に対してハッキリと物を言う。
「……用事なら、あるわよ」
春香は笑顔を一変、ムスッとした表情に変えて苛立たし気味に返す。
「なんでしょうか」
それに対して拓人はただ、抑揚のない声で会話をするだけだ。
そんな拓人の態度にイラッと来て、能力を使いそうになるのを必死に堪えながら平静を装い、質問に答えることにする。
「二つあるわ」
わざと話しを長引かせるような話し方で春香は拓人を見ながら続ける。
「一つ目、あなたは何故今ここにいるの?二つ目、あなたは今日から始まるクラス対抗超能力向上対戦に出るの?」
今度は、間を置かずに一息にしゃべってしまう春香。
そんな先輩を見て拓人は忙しい人だなぁ、と心の中で呟く。
「一気にですか……」
若干、困ったような表情になる拓人だったが、すぐにいつも通りの笑顔を含ませたものに戻す。その状態を維持し、質問に答えるように口を開く。
「一つ目は、LVが11に上がったので、その件に関しての『報告書』の提出。二つ目は、今日は出ませんけど、2-B・3-Aのときは出ます。以上。先輩の用事は済みましたね?」
そう言い立ち去ろうとした拓人の制服の袖を逃がすまいとして春香が慌てて掴む。
突然のことに拓人は対応できず、ただ、引っ張られるまま春香の方へと吸い込まれて行く。
その結果……
「わっ」
「きゃっ」
二人の声が重なり合い、そして……
拓人が春香を押し倒した様な状態で二人は地面に倒れ込んだ。
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