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「…………………………」
「…………………………」
突然のことに二人はただ沈黙する。
「で、いつまでそこにいるつもりかしら?佐藤拓人」
やがて、春香が口を開く。その頬は微かに赤い。
「あ、すみません、先輩。今すぐ退きますので」
それに対して拓人は全くの無反応。美少女を押し倒している状況なのにだ。
「………先輩?あの、制服、放してくれないと退けませんけど」
上から退こうとする拓人の制服を春香は下からしっかりと掴んで放さない。なので、当然拓人は春香の上から退くことができない。
「………なによ」
拓人の制服を掴んだまま春香が呟いた。
「あなた、男よね?」
拓人に向かって当たり前のことを口にする。
「えぇ、そうですけど」
春香の問いに拓人は当然でしょう?という顔で答える。
「…………だったら………何故この状況で何も感じない訳?」
春香の疑問点がイマイチわからない拓人。
「ちょっとは……はずかしがったりしなさいよ」
そんな拓人には構わずに春香は言葉をぶつける。
「?なんだかよくわかりませんけど。先輩、大丈夫ですか?ケガ、ありませんか?」
そこまで言われても拓人は何も感じないようで、笑顔で春香に問う。もちろん、二人の顔は近いわけで、しかも、拓人は学園でもトップクラスの美少年はわけで。
「あ……」
唐突に拓人が声をあげる。
何を思ったかは知らないが、春香が自分の唇を拓人の唇に重ねたのだ。
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