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「………えっと~……」
春香が離れて、制服も解放される。
拓人は呆然と目の前にいる春香を見る。
当の春香は顔を耳まで真っ赤にして俯いている。
「………………あの~…………怒ってます?」
恐る恐るといった感じで春香に声をかける。
「べ……別にっ、怒ってないわよ」
ムスッとした表情で答える春香。
『もうすぐ、朝のホームルームの時間です』
拓人が何か言う前に校内放送が入る。
「…………………………」
「…………………………」
二人は沈黙する。
拓人は何と声をかけようか迷っている。
春香は恥ずかしさからか黙ったまま。
「あの、一つ言っておくことが……」
沈黙を破り、口を開いたのは、拓人。
「な、何?」
なんとか口を開いて問う春香。
それに対して拓人は、笑顔で言う。
「女の人の唇って、柔らかいですね」
「ッ!!」
拓人から発せられた言葉に更に赤くなる春香。
「教室に戻りますね」
続けて発せられた言葉に春香は無言でコクコクと頷く。
「対戦時は、お手柔らかにお願いしますね」
そう言い拓人は走り去って行った。
一人、廊下に佇んだままの春香。
「先輩!!速くしないと遅れますよ!!」
廊下の角、一年校舎の入り口から拓人が顔を出して叫ぶ。
「わかってるわよっ!!」
照れ隠しのためか、春香は叫び返し、二年校舎の方へ駆けて行く。もちろん、顔は真っ赤のまま。
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