Ep1.彼の日常

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  「会長、書類できました」 「あぁ、ありがとう。後で確認する、そこに置いといてくれ」 年が明け、冬休みも明けた2月上旬。 ある高校の4階、理事長室と並ぶ生徒会室で、奥のデスクに座る彼はペンを片手に、手元の書類に目を走らせながらそう言った。 彼の名は篠宮覇蘭(シノミヤバラン)。 後ろの窓から入る日の光に照らされた、流れるような銀髪は背中の中程まで長く、左耳の下で一つに結われている。 瞳は黒と赤のオッドアイで、前髪がその目にかかるかかからないかという長さ。 顔立ちは整っており、男性らしいというよりは中性的である。 背は170後半、体の線は細いが、筋肉がある程度ついているので華奢ではない。 髪や瞳の色は端正な顔によく合っていて、どこか高貴な雰囲気を放っている。 先程提出された書類に目を通した後、ふと時計を見れば5時を過ぎており、長針はあと少しで4を指そうとしていた。 集中し過ぎたか、と内心呟きながら立ち上がり、部屋を見渡す。 部活を優先した役員も居る為、生徒会全員が揃っている訳ではないが、仕事をしに来た生徒はまだ残っていた。 普段は彼が適当な時間に声を掛けて帰るように促しているので、皆時間を気にしていないようだ。 誰かは気付いてもいいのだが……、と苦笑いしながら、いつものように皆に声を掛けた。  
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