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日曜日。
8時過ぎに起きた覇蘭は掃除や洗濯を午前中に終わらせ、昼食後に国立図書館へ向かった。
特に読みたい物があった訳ではなかったので、何か良いものは無いかと歩き回っていると、ある本に目が止まる。
広い図書館の1番奥に位置する大きな棚、そして人の目に付きにくい1番下の段の左側。
不規則な厚さ、高さの本がぎっしり並ぶ中でひっそりと存在する、ただ真っ黒な背表紙。
手にとって見てみると、黒い革の表紙カバーがついた、大分古そうな本だ。
開いて見るが、中はどのページも白紙で何も書かれていない。
かなり古いだろうが、表紙や紙は丈夫で立派な物だ。一体何だ……?
まぁ、どうでもいいか……。
そう思い本を棚に戻しかけたが、ふと気になった。
何故俺はこれが目に止まった? 確かに黒の背表紙など目に止まりやすいが、これは何かが違う……。
そういえば、覇蘭がこの本を手に取った時から、何人かが通り過ぎたり近くで立ち止まったりしているが、この本に目が止まった者は居ない。
まるで、覇蘭の手元は視界に入っているが、ただ視界にあるだけで、意識が向いていない、といった様子。
それを観察していた覇蘭は、まさかと思いながらもある考えに辿り着く。
注意がいかない? 気配が薄い……のか?
ただの思い違いかもしれない。
だが一度そう考えたら気になって仕方がならなかったし、この本を手に取った自分が1番不思議だった。
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