網膜に焼き付いた彼女の笑顔

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生きていれば歳をとる。 生きていれば、もうろくもするだろう。 だったら、いつか俺も彼女を忘却してしまうのだろうか。 いや……ンなの。 「……シたくねぇ」 忘れたくない、彼女の姿を。 覚えていたい、彼女の笑顔を。 っ、クソ……思考が入り乱れ過ぎて訳が解らねぇ。 その場に座り込み狂ったように髪を掻きむしりたい衝動に苅られながらも俺は意識を何とか保とうと試みたが……っ、は。 「……どうやら無理らしいな」 朱名は俺の全てだった。 アイツが居なくなった今、俺を制御出来るモノなんか。 ――有りはしねぇ。 嗚呼、もう要らない。 彼女が居ないこんな世界も。 彼女が映らないこんな瞳も。 全て、全て要るものか。 要らない? ああ、そうか……だったら。 「こんな眼球など刔りだしてしまえばいいんじゃねーか」 壊れたようにククッと笑った俺は迷う事なく指を瞳に向け突っ込んだ。 「うぎゃァあが……ッぐ、ぁ!」 痛くねぇ、こんなモンアイツの死に比べたら痛いものか。 アイツを忘却するくらいならば、俺は、こんな眼球なんざ要らねェんだよ。 ああ視界が闇に覆われていく。 そして最後に映ったのは、 「――朱名」 網膜に焼き付いた彼女の笑顔 (なぁ、朱名オマエが笑ってくれんなら闇に満ちた世界も捨てたもんじゃねェな) .
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