壱・始之小戦

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 そもそも、この国にはもともと「村」という概念は存在しない。  ただ、国の真ん中にポツリと厚い城壁で囲まれた都が、寂しそうに国を見つめながら建っているだけである。  その帝都には、ルールが二つだけある。厳密にいえば法律はたくさんあるが、基本的な決まりはたったの二つである。 「税金を払え」 「帝都の外に出るな」  至ってシンプルで、これを守ってさえいれば、殺人でもしない限り、普通の生活は保証される。  しかし、たった二つのこのルールが守れなければ、都を追い出されることになる。  帝国ギルランでは皇帝、及び元老院を有する政府の意向は絶対だ。もしそれに逆らうような事があれば、一つの例外も無く死刑という、かなりの独裁政治を敷いていた。  それで国が成り立っているのは、政府に逆らうのが馬鹿馬鹿しくなるほど帝都が暮らしやすいということに起因している。  そして、追い出された者達が集まって、誰にも見つからない様に集落を構える。それが「村」だ。  しかし、そんな村もいつしか役人に見つかって、政府の監視下に置かれる。  この国の課税は六歳から。六歳になれば、全ての税金を払わなければならない。  普通なら六歳の子供の税金は親が払う。しかし、二人に税金を払ってくれる親はいない。  孤児のアランとマーシャには払いきれず、村を追い出される結果となった。
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