プロローグ

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「リ・オ・ンくん、聞いてるのかな? 買い溜めしたからすごく重いの! か弱いミラが心配だったら荷物持って頂戴!!」 「分かりました。 持たせて頂きます、が、まだ『リオン』と言う名前に馴染んでいないのです」 『言い訳は要らない』と怒鳴りながらも、この人は小さく『謝る』仕種を見せる。 それをする理由を知らなければ誰も気付かない程に、その仕種はさりげない。 つくづく『ニンゲン』って分からない。 何故『謝る』必要があるのだろうか。 何故常に他者を『思いやる』のか。 そして何故名前をつけたがるのか。 ボクのコードは『1764』。 1764番目の『ヒトガタ』だ。 だから『ヒトガタ』からは『1764』と呼ばれていた。 なのにこの人は『名前』をくれた。 1番分からないのは、その事がボクにとっては『嬉しかった』事だ。 過去に『何故人は名前をつけたがるのですか?』と聞いた事がある。 その時の答えがとても暖かく『心』に響いて、僕は『嬉しい』という『感情』を理解出来たと思ったのだが、まだまだ分からない事だらけだった。 ただ、今の『ニンゲン』は『感情』を無くし始めているそうだ。 あれ程の科学力を誇る『ニンゲン』が『ヒトガタ』に近付き始めている。 今でも明確に残っているのは『優越感と劣等感』だと、この人が教えてくれた。 「リオン、用意も出来たし、この街出ようか。 長居してるとアイツらに捕まる可能性があるから。」 「ミラさんは捕まっても問題ありませんよね? だから、ミラさんが『後悔』しないタイミングで出ましょう」 その方が旅の途中で問題が起きる可能性も少なくなる。 『心残り』とやらは時に危険な事態を招く。 『ニンゲン』は精神力だ、と以前読んだ『本』にも書いてあった。 「…リオン、私には後悔なんてない。 それよりも早く出たい。 一秒でも早く違う空気を吸いたいの」 「…分かりました。 それでは行きましょう。」 何処に行っても空気なんて変わらないのでは無いだろうか。 違う空気とは一体なんだろうか? ミラさん、アナタはボクの知らない知識を沢山持っている。 アナタにはそれを教えて頂きます。 その対価としてボクはアナタを守りましょう。
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