後悔先に立たず

2/6
前へ
/15ページ
次へ
「リオン、私もう歩けないよぉ。 少しで良いから、休ませて」 「…分かりました。 ではそこの日陰で休憩を取りましょう」 まだ1時間程しか歩いていない。 あの巨大な街はまだ後方にハッキリと見える。 全くもって『ニンゲン』とは弱い存在だ。 たった1時間歩き続けただけで『疲れ』を感じる。 ボクら『ヒトガタ』なら『疲れ』など感じないままに動き続けられるのに。 何故こんなにもか弱い生き物に、ボク等『ヒトガタ』は従って居るのだろうか? それ程までに、付き従う絶対的理由など無いとしか思えない。 まぁ、今はこの人に従って動こう。 今はまだ『ニンゲン』として不完全なんだろう。 『ニンゲン』として生きる事が出来たなら、この人に価値は無い。 ボクは対等の存在になるのだから。 「あと5分程で動けますか?」 「無理無理、私は温室育ちだったから持久力は無いの。 ってか、女の子に対する優しさが足りないわよ。 女の子が困ってたら助けたり、優しい言葉をかけなさい」 温室育ち?優しい言葉? …分からない。 「ミラさん、『温室育ち』と『優しい言葉』って言うのは何ですか?」 ボクは聞いた。 自分の知識に無い言葉だったから、知りたかった。 前にこの人から教えてもらったが、ボクには知識欲があるそうだ。 それもかなり強い『欲求』らしい。 「あら珍しいのね。 リオンに分からないのは感情についてだけだと思ってたわ」 クスクスと『笑い』ながらこの人はボクに教えてくれた。 すごく分かりやすい説明だったが、『優しい言葉』については理解出来ても、その感情にはお手上げだった。 相手を『思いやる』気持ち、ボクの一生の疑問になるのだろう。 「リオンは冷たい瞳してるけど、本当は温かいって事分かってるからね。 きっと誰かを思いやる事も理解出来ると思うわ」 この人の言った言葉の意味が分からない。 だけど、ボクは追求しなかった。 きっと聞いても答えは無いのだろう。 理由は無いが、そう思った。 完全な『ヒトガタ』の時にはこんな『気持ち』になった事は無かった。 だから、ボクは『ヒトガタ』ではない。 今はそれが証明出来るだけで良い。 時間は呆れる程に長い。 ゆっくりしよう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加