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いま僕らは『LION』の下を延々と歩いている。
相も変わらず見えるのは金属ばかりだが、一つ不思議な事があった。
あの街から離れて3時間程経った頃には、足元の金属プレートがアクリルに変わり、下から映像が映されていた。
風になびく様に揺れるあまたの緑の何か。
初めて見るが、少し懐かしく暖かい気持ちになる。
ちなみに、考え過ぎが祟りあの人から質問禁止令をされたため、当分は黙々と歩く必要があると思っていたのだが…、この時ばかりはあの人に許しを得て教えてもらえた。
そりゃあ必死に説得した。
あの人の口から出たのは『草』、『自然』、『絶滅』。
今はもう無い、『地球』という母なる大地の産物。
『ニンゲン』は自分達の母を棄ててまで『生』に固執した。
それなのに、今でもその面影を求めるなんて、あまりにも自分勝手で、滑稽でしかない。
そんなボクの気持ちを知っていたからだろうか?
あの人は話題を逸らすように話しかけてくれた。
「ねぇリオン、この服可愛いと思わない?」
髪形やら服装やらアクセサリーやら、何かとボクの守備範囲以外を攻めてくる。
「ミラさん、ボクはその話題は苦手なんですよ」
「あら、他人と上手く会話する事が出来ないと立派な『ニンゲン』にはなれないわよ」
「…アナタは意地悪な人ですね。
でも、ミラさんの服装や髪形は暖かい感じがして好きですよ、一見すると雑誌の『男をオトス髪形特集』というコーナーで見た人達に似ていますが、っ痛い!」
ボクは精一杯褒めたつもりだった。
でもミラさんは眉間にシワを寄せてボクの頭を殴った。
それもグーだったから本当に痛い。
「『特集』って何勝手に人のモノを見てるのよ!?
悪かったわね!?
たまたま見てたら髪形が可愛かったのよ!!
小顔に見えるし、髪の毛を盛ったら華やかだし、なんか女の子っぽくなるかなって…」
語尾はすごく小さい声で聞き取り辛かったが、表情を見ている限りでは恥ずかしいのだろうか?
しかし、一つ学んだ事がある。
『ミラさんの持ち物を勝手に見るのはやめる』
守らなければ、また殴られるだろう。
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