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単純な思考を一秒間繰り返して、竜牙は愕然とした。
(一般人でしかない俺に、コイツをどうにかできるわけないじやないか……!)
内心で絶叫しながらも、口は堅く開かない。
開けば、勢い余って舌を噛んでしまうかもしれないからだ。
視界の端に、黒いコートの裾がちらりと映る。
「あー、もう!!」
竜牙は半ばやけくそで、片足を大きくぶんっとふった。
風を切って繰り出される、鋭いまわしげり。
常人にしては速いが……。
――むろん、そんなもの当たるはずもなく…。
『何か』は竜牙の渾身の一撃をひょいと避け、目の前の哀れな少年につかみ掛かろうと、腕を広げた。
「ちょ、ちよっと待てぃ!!」
情けなく震えた声を発して、
――気付く。
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