帰ってきた「星姫様」

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「今回は特に緊張したんだよ?」 そうは見えなかったです。とはとても言えない。 本人が緊張したって言うなら信じるしかないけど……あまりにも説得力が無さすぎる。 「沢山の人の中から、弟が私のことを見てるんだぁ、って思っただけで、どうにかなっちゃいそうだったんだから」 いや、どうにかなっちゃったんですけどね。 会長がどれだけその弟に極端なコンプレックス、あるいは愛情を抱いているのかはわからない。 しかし「弟を宜しく」と頭を下げたくらいだ、大切な存在であることは間違いない。 「会長の弟って、どんな人ですか?」 「とっても優しい子だよ。私の自慢の弟なの」 そういって、会長さんは今日一番の笑顔を見せた。 自慢の弟、だとさ。羨ましいぞ、こんちきしょうめ。 会長の弟なら、名字は泉谷か。 クラスに居たら話しかけてみよう。 「ねぇ修司」 心なしか不機嫌そうに俺の名を呼ぶのは、自称・俺の嫁。 あくまで自称であって他称ではない。俺はそう信じたい。 「どうした聖奈。あぁ、トイレか。なら、すぐ近くのコンビニを使うといい。あそこはいいぞ、便座は温かいし、便座カバーまでついてある。しかも陶器は抗菌加工済みでな」 「それ、便座カバーいらないんじゃ……って違う! 私に便意は無い!!」 俺の便座縛りにさりげなく突っ込みを入れた後、すぐに俺のわき腹に聖奈の正拳突きが繰り出された。 「ぐおぁっ!? お、お前……急所狙う時はちゃんと断りを……っ!」 痛みが鋭すぎて、上手く声が出せない。 「まったく……あんた私になんて事言わせるのよ?」 「お前が勝手に口走っただけだろ……?」 そもそもの原因は俺にあるんだろうが、まさかこいつが少しでも話に乗ってくるとは思わなかった。 これは予想外だったが、それにしても正拳突き痛ぇ。 岩盤なんて、ひと突きで破れんじゃねぇの? ってくらい痛ぇ。 「私はただ、私という嫁を差し置いて他の女とくっちゃべってるあんたの存在が気に入らなかったから、結果的には良かったんだけどね」 「なんだ、嫉妬でもしてんのか?」 「……嫉妬よ」 「…………あっそ」 頬をちょっと赤くしながらも、少しも濁さずに俺の言葉を肯定してきたのには驚いた。 不覚にも、愚かにも……こいつ可愛いって思ってしまった。
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