帰ってきた「星姫様」

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その日の正午。 今日は入学式のため、学校は午前のみ。 会長から、一年を通しての日程表やらなんやらの用紙をもらった俺達は、その場で解散することになった。 「じゃあ、俺先に帰りますね」 「うん、気をつけてね。沢宮君」 会長の言葉を背中で聞きながら、生徒会室から一歩出てみると、辺りに新入生の姿はない。 結構時間食ったからな……部活の練習着に着替えた先輩がちょくちょくいるくらいだ。 千鶴会長は、仕事が残っているために、まだ帰れないんだとか(俺のせいだと思い、手伝おうとしたら断られた)。 なんだか心苦しいものがあるが、本人が助けなんていらないと言ってるんだから、こればかりはどうしようもない。 「由夜、私達も行くわよ」 「はい、姫様」 聖奈と由夜さんが俺の後に続いて生徒会室から出てくる。 後から出てきた由夜さんが「失礼しました」と言って扉を閉めると、自然とため息がこぼれた。 「ふぅ……疲れた」 叫びにならない叫びだった。 そういや、遊乃はもう帰ったのだろうか? 昔はよく一緒に登下校をしたものだが、中学生になった辺りからめっきり減ったな。 まぁ、幼なじみなんてそんなもんだろう。年頃の男女がいつも一緒にいるってのもどうかと思うし。 これはこれで、良い関係と呼べるんじゃないかな。 教室に戻った俺は、誰もいないことを確認して自分の荷物をとった。 そういや、聖奈と由夜さんは手ぶららしい。 さっき会長にもらったプリントを持ってる様子もないけど……制服のポケットにでも入れてるのかな。 まぁいいや。さっさと帰ろ。 「んじゃ、また明日なー」 二人の美少女に向かって手を振り、俺は軽快に教室を飛びだし―― がしっ。 「こら。自分の嫁を置いて、どこに行くつもり?」 ……飛び出したつもりだったのだが、聞き覚えのある声と共に、手首をがっちりと掴まれてしまった。 何、この展開。嫌な予感しかしねぇ。 こいつはとんでもない美少女(いろんな意味で)だから、チキンな俺は直視するのも気が引けてしまう。 だから俺は、なるべく目をそらせながら答えた。
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