142人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな時に都合よく、目の前に公園があった。
遊具・砂場・ベンチがある、どこにでもあるような施設だ。
「すまん、ちょっとここに寄っていいか?」
振り返り、後ろについてくる美少女二人にそう聞いた。
「別にいいわよ」
と、特に変わった様子もなく言葉を返したのは聖奈だ。
聖奈のその様子を一瞥した由夜さんも、にこやかにこくんと頷いてくれた。
幸いにもベンチは空いている。
速やかに、ベンチに腰掛けることにした。
「ふう……」
今日、何度目のため息だろうか?
回数を数えるのを諦めたくなるくらい、精神的にも肉体的にも疲れきっていた。
「お疲れのようですね、修司様」
そういって俺のとなりに腰掛けたのは、金髪碧眼美少女の由夜さんだった。
ちなみに今、俺の左側には由夜さんがいて、右側には無言の聖奈がいる。
早く座りたいがために、後先を考えないまま真ん中にどっぷりと腰掛け、結果、美少女に挟まれることになってしまったのである。
今はこの状況をポジティブに考えよう。
『俺の両隣には美少女がいる』とな。
……あれ? これ余計に緊張してしまわないか?
「は、ははは……まぁ何と言うか、いろいろありましたからね……公然でキスとか」
今の俺は、きっと疲れ笑いを浮かべていることだろう。
吐き出すように淡々と並べた言葉には、我ながらその境遇に同情してしまいそうでもある。
そんな俺の様子を見越してか、由夜さんはそっと耳打ちしてきた。
「……すみません、姫様は思い立ったら行動に移さないと気が済まない性格でして。ご迷惑をおかけしてしまいましたね」
聖奈に聞かれないように、経緯というか、原因のようなものを教えてくれたのだろう。
由夜さんは苦笑いを浮かべている。
うん、やっぱりこの人いい人だ。何度も言うがとても同い年には見えない。
どこかの「姫様」にも見習ってほしいくらいだ。
……そういえば、由夜さんと会話したのってこれが初めてだわ。
最初のコメントを投稿しよう!