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その日から、懐かしい香りのするかさかさの葉が桔梗の宝物になりました。
それだけではありません。周りにある全ての物が桔梗の宝物となりました。
桔梗は気付いたのです。あの、寒い凍える様な冬の朝に桔梗を暖めてくれた太陽は父であった事を。
あの暑い夏の日に、桔梗に降り注いだ雨は祖父だったこと。そして、あの寂しい夜に優しい光で慰めてくれた月は祖母だったことを。
桔梗が枯れなかったのは偶然ではなかったのです。
桔梗は、自分がここに咲いているのは必然だった事を確信し、初めて温かい涙を流しました。
溢れ続ける桔梗の涙は空中できらきらと輝き、その様子はまるで小さな小さな真珠を散らばした様でした。
その時です。
「きれい。」
どこからか声が聞こえてきました。
「きれいだね。」
桔梗の前に一人の旅人が立っていました。
桔梗は思わず顔を上げました。
『星の王子様みたい。』桔梗はそう思いました。
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