星の花【第五夜】

2/2
前へ
/40ページ
次へ
旅人は言いました。 「綺麗。」 桔梗はうつ向きました。クシャクシャの花を見られたくなかったからです。 しかし旅人は桔梗をまっすぐに見つめて、また言いました。 「綺麗だね。」 桔梗には何が綺麗なのか分かりませんでした。小さな小さな真珠のような涙の事を言っているのか、それとも涙で出来た七色の虹の事を言っているのか。 旅人は、そんな桔梗の気持ちを見通したかの様に、優しく微笑みながらこう言いました。 「全てが綺麗。涙も虹もこの星も貴女も」 えっ?『この星が綺麗?…私が?綺麗?』 桔梗は少し混乱しました。 疲れて枯れかけの私が綺麗なはずはない。この人は何を言っているんだろう。桔梗には理解できませんでした。 この星だって、ただ土と空があるだけ…。 旅人は言いました。 「ここに座っていいかな?」 桔梗には断る理由はありません。 「どうぞ」 桔梗がそう言うと、旅人は桔梗の隣に座りました。 それから二人はしばらくの間、桔梗の涙と涙で出来た虹を眺めていました。 「ここにいるとホッとするなぁ。なんだか癒されるよ。」 旅人は言いました。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加