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その細い腕のどこにそんな力があるのだと問いただすのもバカらしい、こいつだってクロと同じ日本人だ、見てくれにはまったく感じさせないバカ力野郎だ。
「よし、これでいい、素敵なワンシーンだね」
見下ろす体勢から見せる、飢えた獣みたいな顔と両目。そして押さえつけらた格好に、なにやら既視感。
「……よくねぇだろが、このド変態野郎。景気の悪そうな顔で見下ろしやがって……それにこれが素敵な舞台のワンシーンに見えるってなら丁度良い、その牛の右目玉をくり貫いて生理用の食塩水で洗ってきてやるから今すぐそこをどきやがれ」
試しに両腕を動かしてみる。
もちろん、ビクともしない。
「あれ、そうかい? 僕には実にポピュラーな朝のワンシーンのように見えるのだけどね」
「ふざけんな、そんな殺伐とした朝を迎える野郎なんてこの島には………………」
………………。
「いないんだ?」
「…………1人だけだ、そんな可愛そうな野郎は1人しかいねぇよ、まったく同情しちまうよ、なんてマヌケなマゾ野郎だ」
そうか、組み敷かれる気分はこんな感じだったのか。最高にマヌケで屈辱的だ、明日からの起床方法を考慮する必要があるのかもしれない。どちらにせよ男とベッドに入る状況なんざ上下右左前後ろ関係無く最悪なのには違いない。
「さてと、じゃぁ僕が怒っている理由を知ってもらう前にまずは僕たち日本人、その中でも灰人について今一度思い出してもらおうか?」
「なにが思い出せだ……お前ら灰人はどいつもこいつもイカれた超人変態野郎だ、ただそれだけだ」
「間違ってはいないね。確かに僕達日本人が呪灰に感染すれば皆何かしら大きく偏ってしまう、食欲、睡眠欲、性欲、その他色々な欲求への偏りが大きいのは事実だ……元々、か細く、とても脆弱で不安定な種族だったからね。では、どうしてそんな僕達が世界中の嫌われ者になったのか」
「てめぇらが、先に世界に喧嘩をふっかけてきたからに決まってんだろうが、それ以外になにがあるってんだ」
「戦争か、まぁそれもあるよね。人間の歴史は常に戦争だ、今まで幾百年と繰り返し、都合の悪い奴らは根絶やしにしてきた、正解だよ。だけど、それは今までに“よくあった”ことだろ?」
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