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リュウジは不機嫌と言うわりには楽しげにクツクツと笑った。表情が照明に照らされて口端を持ち上げる舞台の支配人、そいつに片足で押さえ込まれる俺の気分は言うまでもない。
「…………いいか、一度しか言わねぇから耳の穴こじ開けて聞けよこのご機嫌野郎。今すぐこの女みたいな足を退けろ、今ならまだできるだけ友好的な方法でその頭をすっ飛ばしてやる」
これ以上ないくらいの負け惜しみ、どう見ても状況は不利、痺れた神経で理解する症状は良いところ脱臼で最悪なのは筋が幾つか切れているといったとこだろうか。
確かに痛い、クソ痛ぇ……なのに、なんだよ……。
「何を言ってるんだい、僕は怒っているんだよ? 今の僕はまったくもって不機嫌だ、不機嫌極まりない。大切な同族を蔑ろにされているんだから、ねっ」
「――っっ!? ッっっ――!?」
またも嫌な音。
表現したくもない。
とりあえず腹痛。
とにかく激痛。
吐き気と嗚咽と痛みと他色々。
「……あぁっそうだ。支配人としてはうっかりしていたよ。ご友人様、エチケット袋はご入り用かい?」
それどころじゃない。
勢いよく腹からドロドロとした物が込み上げる。色々と吐き散らかしそうだったが、それ以上に腹の底の底のそこらかしこから込み上げてくる膨大な熱の奔流が骨を暖め、痛みと、何かを少しずつ捨てていく。
「さて、場面を進めようか、ピーター。まずは僕の台詞からだ……っと、その前に」
そう言ってこっちの了承もなく、隣でもなく、そのまま座り込むようにして俺の鳩尾の上にどっかりと腰を下ろしてから、何か一瞬考えるように間を開けてから、片手でこっちの両腕を頭上にやるようにしてベッドへと片手で押さえつけた。
男に押し倒された場面のできあがりだった。
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