第六幕『海の黒の魚』

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「…………………………」  そうだ、そりゃ今までよくやってきた事だ。  利益を妨げる、信じる神が違う、気にくわない、意味はしらない、自己利益のためだ、友が恨んでいたから、ただ……なんとなく。  そういったあらゆる理由を正当化して戦争は腐る程にやった、数々とあった。 「――だから、違う」  万力に握りしめ押しつけられた両手首が強く軋んだ。 「ここまで統一された憎悪や怨恨が継続され続けられる理由は世界に喧嘩を売ったからじゃない。そもそも戦後の時代で世界と日本が喧嘩したからって、祖国を鼓舞し日本を敵視して決起するほどに愛国心に満ちた人間は溢れているのかい? 違うだろ、嫌悪の根本は正義心じゃない――恐怖だ」  確かに世界がどうなろうと、知ったこっちゃ無かっただろう。なぜなら世界とナニかが、ナニをヤロうとも、それは隣の話だ。世界に喧嘩を売った日本人なんて知ったこっちゃなかった、遠い世界の物語だ。  自分自身へと災いが及ぶまでは。     ヒトゴトダ 「あぁ実に良い目だ……やっと思い出してくれたようだね」  その恐怖の根底――それが呪灰。 「あぁ、そうだよ……俺達は、お前達が――恐い。……お前達灰人が恐くてしかたがねぇ」  だらか多くの人間が嫌悪する。  その象徴、その具現、その現象こそが――灰人。  呪われた咎人の撒いた灰、呪灰。それは大日本帝国が使っていた最悪の最終兵器。間違いなく頭のネジを締めすぎて頭蓋を砕いたようなイカれ野郎が作り出した、この世で最も忌み嫌われている戦禍の病、生物兵器、一種の――――感染病。
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