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「そして呪灰に感染された人間を君達は灰人と名付け、世界から遠ざけた。確かに君達のような人間に感染すれば間違いなく死からは逃れられないからね」
呪灰による感染者を世間は最初、灰人もしくは呪灰人と呼んだ。
しかし感染し、発症してから何一つ処置を施さなければ早くて数時間もしくは数日で、何らかの処置を施して数ヶ月持たせた奴なんて希で、一番多いのは感染を確認したその場で仲間に撃たれ、次に多かったのは自前で自分を処分することだろう。
順を追うかのように、呪灰人という名前は感染者を指す言葉から、唯一、その病魔から逃れる事ができる日本人へと=付けされた。
「あぁそうだ、その通りだ。呪灰に触れた人間は例外無く死ぬんだろうな……てめぇら日本人を除いてな」
そして戦時の世界にとって不幸悪だったのは、余すことなく全ての日本兵がこの呪灰を身体に宿らせた超人だったということで、幸運だったのはその後世界で発見された日本人も、その殆どが呪灰を宿していたことだ。
「あれはもともとは僕達の種族が先天的に抱える病気への治療法の一つだったんだけどね。良薬も過ぎればなんとやらってやつだよ。なんだ、ちゃんと思い出してくれたみたいだね、さてさて」
その後、世界各地で発見された日本人が高値で取引されはじめた理由は主にコレに理由だ。
「――じゃぁ最後のおさらいだ」
リュウジは暇を持て余していた片手で髪を掻き上げて、その黒を露わにする。
「僕を見るんだ、ピーター」
灰人の証でもある、その黒だけで作り上げられた黒目で俺を見つめれば、その目の中には俺が微かに写っていた。
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