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そして右手には、自分のナニより握り慣れてしまった、ベレッタM92。15発装填のダブルアクションタイプのショートコイル。
既にこいつは俺の右腕と同等だった。その銃口と唇は俺の指先も同然。そんなイメージが脳と体にこびり付くほど、コイツはもう切っても切り離せない俺の一部になっている。
そして今日もこいつで、悪ガキ共の尻を銃弾で引っ叩き、現実からたたき起こして夢の厳しさを骨身に教え込む。
もちろん、授業料はてめぇらの命じゃ安すぎるから勘弁してやるつもりだった。
なのに……その予定が……よ。
「あぁクソッたれ……どうしてこうも現実は厳しいんだろうな」
突如、現実へと戻されたのはこっちの方だ。
銃声が再び一音、町外れにある、寂れた港で響き渡る。後追うように、さっきとは違う男の叫び声と呻き声。そこへ追い打ちをかけるように、さらに一発。
命を吹き飛ばす轟音。
今度はさらに、さらに近い。
音は俺が咄嗟に隠れた小さなコンテナの中にやたらと響いて反響している。
その上、このコンテナの中は暑い。
年中夏みたいなこの街で、密封されたコンテナの中は、真夜中にもかかわらず、まさに日中の砂漠のソレだった。
熱い砂の代わりに、ここまで満ちてきた死の匂いが肌へとへばりつく。嗅ぎ慣れちまった、ナニかが済んじまったような、独特な鉄の匂いが鼻腔を埋める。
血だ……。これは血の臭い。
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