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「あぁ……くそったれめ、冗談ならもっと気のきいたやつにしろっての……」
賭は一か八か? そんなどころじゃねぇ……もうこいつは、いわゆる。
「出たとこ勝負……ってやつか」
オーケー……なら、事は急げだ。
時は金なり。金は力なり。力は命なりだ。
俺は心音で正常にスリーカウントできるようになるまで匂い立つ死の香りで深呼吸をし、そして。
コンテナから飛び出しだ。
炎で暖められた空気が熱風となって頬を叩いた。
そして飛び込んできた景色は、すぐさま俺の網膜を焼いた。
それはまさに目を疑いたくなる状況ってやつだった。
しかし焼け付いた現実は、揺るごうとはしない。
コンテナに囲まれた寂れた船着場は、やはり思った通り、辺り一面に炎がブチ撒かれていた。
無造作においてあった木箱やドラム缶に入ってあった廃油に引火した炎は夕日よりも赤い、鮮血よりも尚紅い。
炎光が会場を染め上げている。
積み上げられたコンテナに映し出された影が炎で揺れる。
影の主は全部で10人。
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