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しかし、舞台にいるのは俺ではない。彩っているのは、俺ではない。
今夜の主役の座。
そこにいるのは、俺じゃない。
バカ共と向きあい対峙しているのは、俺じゃない。
燃え盛る赤いスポットライトで、その威容を映し出されている者こそ、今夜の主役。飛び入り参加で俺の見せ場を奪った人間だ……。
その姿を見て、やはり目を疑った。
何度見ても、これが現実だと思えない。
なにせ、俺の役を奪ったのが……。
見目麗しい少女だった。
長く黒い髪は、血で赤く濡れ。白い肢体は、血で赤く彩られた……。
――――少女。
歳は、どう多く見積もって17そこらだ。
この中で立っている人間の中で、無論一番背も低い。
腰まで伸び、炎に照らされ揺れて波立つ髪は、まるで太陽を沈めた黒の海。
突如現れた俺の存在に気づき、少女の視線が飛ぶ。
鋭い黒瞳。その視線はまるで肉食獣の輝きと危うさを孕み、冷たい殺気が俺の背骨を突き刺した。
…………背筋が……震えた。
その時、ナニを狂ったのか……思わず俺は銃を地面へと下ろしてしまった。
――その、瞬間。
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