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するとそこには、絵の具や土埃で汚れた男が立ちはだかっていた。
今まで彼女を庇う人間などいなかったので、その光景にただただ驚いていた。
街の人も同じだったようで、いつもは賑わっている大通りが、
一瞬、時が進むのを忘れたかのように静かになった。
沈黙を破ったのは、その男だった。
彼は少女の方を向き、彼女の手首をつかみ、こう言った。
「…やぁ、こんばんは、素敵なおちびさん。僕らはよく似ているね。」
彼女の瞳に、彼のくすんだ金色の癖っ毛と透き通った蒼い瞳が入り、とっさに思った。
---ヒトヲ シンジテハ イケナイ----
彼女はつかまれた手を強引に振りほどき、反対を向き、住み慣れた孤独へと全力で逃げた。
生まれて初めての優しさが、信じられなかったのだ。
しかし、男の方もめげることなく、毎日のように彼女の前に現れ続けた。
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