第1章 to station from home

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2.公園 たっ たっ たっ たっ たっ… いつも全速力で走り抜ける公園。 この辺りに引っ越してきたのは私が高校生になってからだから、この公園で遊んだ記憶はない。 昼間は子ども達が遊んでいるし、夕方になれば学校帰りの中学生でいっぱいになるし、夜になればカップルが1組いてコソコソ話してる。 休みの日なんかはキャッチボールをしてる親子を見かける。 春には花見が出来るくらい桜が咲くから、宴会を始めるじいさんばあさんがいる。 だけど朝の公園はまだ誰もいない。 それは当たり前かもしれないけど、なにげなく見落としてることじゃないかな。 運動不足の私が、唯一、たった数分だけ走る公園。 上を見上げたら裸になった木の枝の間から青空が見えた。 "春の準備をしてるんだなぁ" 空を遮る枝についた小さな膨らみがそう感じさせた。 足元は霜柱。 冬なんだけどワクワクする瞬間。 一瞬で走り抜けた冬と春の間。 「ハァッ、ハァッ…。」 息を切らして歩き出す。 今日の運動終了。 私の運動時間もまた一瞬だった。
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