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1.ホーム
風を遮る場所のないホーム。
こんな駅ビルもない駅はホームさえ寂しくて、寒さに身を縮める。
たくさんの人が立ち並ぶ朝。
こんなに近くに人がたくさんいるのに交わされる会話はない。いや、だって知らない人だし。
"今この人に話しかけたらどんな反応が返ってくるだろう…。"
その後が気まずいから決してやらないけどね。
でも、昔は道ですれ違った人には挨拶くらいしてたんじゃないかな。
そして人は黙ったまま電車が来るのをじっと待つ。
「ずたたたたたたたたっ。」
階段を駆け下りてきた男の人。私の隣に並んだ。
“おはよ。今日はいつもより遅かったね。”
私はこっそり心の中で挨拶する。
いつも私と同じ時間の電車に乗ってくる彼は、いつもなら私より先にホームで待っている。
だけど、今日はいなかったから休みかなぁなんて思ってたところ。
でもよかった。電車に間に合ったんだね。
決して恋なんか芽生えるはずのない私のヒトリゴト。
だって、その男の人はどこの誰だか知らないような50代のおっさんだから…。
「まもなく~番線に電車が参ります。黄色い線の内側までお下がり下さい。」
電車がホームに滑り込んできた。
この時吹き抜ける風が寒いし乱れるから嫌いだ。
黙ったまま電車を待っていた人たちが、黙って開いたドアから乗り込んでいく。
それに続いて私も乗り込んだ。
静かに徐々にスピードを上げて電車が走り出した。
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