恋愛体質

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周囲が俺を恋多き男と揶揄するのはそれなりの理由があって、悲しいかな、俺は所謂恋愛体質なのであるからしてしょうがないと言われればしょうがないことなのである。と言うのも、俺は典型的な惚れやすい性格をしており、例えばちょっとやさしくされたりだとか意外な一面を目の当たりにしたりだとかいうギャップにころっといってしまうのだから、自分自身手に負えないというのは重々承知している。 女性にはとんと縁のない俺だが、どうやらそのテの人間には非常に興味をそそられる容姿やら雰囲気を持っているらしく、同性相手の手管というのは嫌でも身に付いてしまったというかどうやら俺は性別に関係なく惚れてしまうと知ったのは意外にも中学に上がってすぐだった。 高校に入る頃にはそれなりの恋愛も経験も積んできたつもりだったけれど、やっぱり何事も終わりというものは心に陰を落とすもので、桜咲く季節に訪れた新しいクラスメートとの出会いや環境の変化に慣れた頃、三ヶ月付き合った男との別れは間違いなく衝撃的過ぎて、正しく、そう正しく天地がひっくり返るほどに世界は変わったと思ったのだ。 いくら恋多き男といえども、遊びだった恋なんて一度もないしそのとき抱いた感情は本物で本気で泣き崩れるしかなかった。 俺の恋愛は長続きしない。 三ヶ月なんて長いほうだ。 それでも好きだった、好きだったのだ、本当に。 別れは余りにもあっさりしたもので、数回のメールのやり取りで終わった。 気付けば涙があとからあとから溢れて、止まらなくて、俺は声も出さずに部室の机に突っ伏した。 中庭できゃいきゃい騒いでいる女子生徒の声が開け放たれた窓から聞こえてきて、俺が今こんなに苦しんでいるのにとか理不尽な怒りを覚えて顔を上げると、ブレザーの袖に水分が染み込んで色を濃く変えているのに気付く。 色事で泣くなんてどんだけ乙女なんだよ、なんて自嘲めいた笑みが零れ、傍らに置かれた箱ティッシュに無造作に手を伸ばしたときだった。 ガチャ。 ドアが開けられ、反射的にそちらを見て失敗したと思った。 昼休みに部室に来るなんて部員以外のわけがなくて、しかもここ最近コイツが昼休みは部室で休んでいると聞いていたはずなのに、あぁなんてこった。 .
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