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「た、頼、む…助け…」
徐々に青ざめていく男に少年は、
「あんたらみたいな人見てるとやな、イライラするんや。
弱い奴が群がり、さらに弱い奴を痛め付ける。
楽しかったか?」
再び少年の顔に現れた凶悪な笑み。
男はもう白目を向き、口から泡を吹いていた。
「…終いや。
これで全部…」
少年は拳を構え、掴み上げている男めがけて……打った。
だが、
「やめて!!」
後ろから響いた声に反応した少年は、男の顔に当たる直前で拳を止めた。
そして少年は、声のした方を向いた。
「…なんや、お前さんか」
そこにいたのは、少年と同じ年くらいの少女が、傘も差さず雨の中、立っていた。
「なんで…ここまで…」
少女の目から流れる雫は、雨とは違うものが流れていた。
「なんでって、お前さんが頼んだんやないか。
俺に向かって、助けてって」
「…でも…なにも、ここまでしなくても…」
「あんたは甘いなぁ」
掴み上げている男を見る少年。
そして少年は、男が少し咳き込んだかと思ったら、咳と一緒に血が少年の顔に付着した。
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