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「おはよ」
今日もあの日と同じように、浅井の挨拶に振り返る事も無く、未奈は体育座りで外を眺めていた。
何を見ているのだろうと思い、浅井も隣まで行って外を眺めて見たが、グラウンドにはよくある朝練の光景しか無かった。
「パン、買ってきたよ?」
「ありがと」
未奈が手を伸ばしたのでビニール袋ごと渡した。
「は? これ全部?」
「何が好きかわかんなかったからさ」
「いや、限度あるっしょ」
未奈はビニールの中をごそごそ探ると苺のサンドイッチを手に取り、ビニール袋を浅井に突き出した。
「これ以外賞味期限切れてるし」
賞味期限の短いパンを、嬉しさのあまり学校帰りに買ってしまった浅井のミスである。
浅井がヤラカシタ! という表情をしたのを見て、未奈は愉快そうに笑った。
「浅井ってそんなキャラだったんだ? もっとクール系かと思ってたよ」
そうそう。
恋に浮かれる浅井凌の色々をお伝えしてしまった今、伝わりにくいかもしれないが学校での浅井凌はクール系の印象なのである。
結構背が高くて、細くて、オサレな髪型で、ギターとか背負っちゃってて、不器用……てか、無口?
――実はこれがクラスメイトからの印象なのだ。
未奈にとってもそれは例外ではなかったらしい。
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