お礼の電話

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[お世話になっております。こまちフーズの山岸と申します。] 受話器の向こうから凛とした声が聞こえてきた。 [お忙しいところ、申し訳ございません。一言お礼を、と思ったものですから…。] 「え…!?」 意外な言葉に驚いた。  お礼ってなんの!? オレには心当たりがない。 [今日の入庫分、無理なお願いをしましたのに受けてていただいて…本当にありがとうございました。 新田様のお陰で欠品しなくて済みました。 今後、ご迷惑おかけしないように努めますので…] 「わざわざそのために…?」 思わず言ってしまった。 だって…。 今までこの仕事してて、お礼の電話なんてもらったことなんか一度も無い…。 オレが頭を下げて必死に倉庫に頼んでも…  やってくれて当然。 的な取引先ばっかだ。  ヤバい…。  なんか、ちょっと嬉しー  かも!? でも…。 [あ、そう…ですよね。お忙しいのに…。すみませんでした。] 電話の向こうの凛とした声は張りを無くしてしまった。 「あのっっ、違うんです!!」 慌ててフォローを入れる。 「わざわざご丁寧にありがとうございます。 でもたいした事じゃありませんから…。 また何かありましたらいつでもご連絡下さい。出来る限りやらせていただきますので。」 今までになく対応のいいオレがそこにいた…。 .
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