初電話

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[あの、大変申し訳ありませんがうちの倉庫に明日納品して頂く事は可能でしょうか?] なんだ…。 声は違っても内容はいつもと同じだ。 ちょっとがっかりした。 うちの倉庫は静岡。 そちらさんの倉庫は秋田。 しかも入庫時間は午前指定。  厳しいんだっっつうの!! 文句を言いたいのをこらえる。 いつもと違う人みたいだし、文句言っても仕方なさそうだ。 「とりあえず商品は何でしょう?」 聞くだけ聞いてみた。 すると…。 [あの……~~] 電話の向こうの相手は遠慮がちに答える。  あ、この声‥いいかも… さっきはすげぇ綺麗な、凛とした張りのある声…だったけど、遠慮してるせいか少し甘いニュアンスが加わった。  やっぱ、前の人と違う!  新しい人かな? ちょっとワクワクする。 仕事柄、いろんな取引先の女性と話す。 めちゃくちゃ甘ったるい若い娘。 ものすごく無愛想な女性。 事務的に会話する女性…等々…。 まあ、仕事なんだからそれが当然なのかもしれないんだけど。 だけど…。 電話の向こうの相手はそんなどれにも当てはまっていなかった。 [あの…、大丈夫でしょうか?] 相手の言葉にハッとする。  ヤバい、仕事、仕事! オレはさっき相手が言ったことを頑張って思い出す。 確かアイテム数も数量もそれほど多くはなかったはず…。  イケるか。 そう判断したオレは 「ではそれでやってみますので、発注書の方大至急頂けますか。お待ちしております。」 そう言って受話器を置いた。 .
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