人質として

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しかし、本来なら、握り潰す筈の書簡だが、これに関しては無下には出来ないと思った。細川忠興の妻には何度か会った事があった。忠興は妻を人目に触れさせるのを嫌い、風にもあてぬと言われていた。 そんな細川ガラシャに政宗と小十郎は数度会う事が出来たのは、忠興が政宗を気に入り信用していたからに他ならない。 ガラシャは豪華な着物を身にまとい、美しく清らかで、良い香りがした。 このような女を快く思わぬ男はいないだろう。 それは小十郎とて同じ、しかもその時感じたのは、二人は一目でお互いを気に入ったような気がした事だ。幼い頃から常に共に行動し、小十郎を知り抜いている政宗だからこそ、この誰にも気づかれる事の無いはずの心のやりとりに気づいた。
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