【2】ヒャクニチソウ

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【2】ヒャクニチソウ

私が小学生だった頃。 学校の帰りに、よくお婆ちゃんの花屋へ寄った。 お婆ちゃんは、私のお母さんのお母さんで、お母さんも結婚するまでは、その花屋で育ったのでした。 『お婆ちゃん、ただいま。』 『お帰り。毎日毎日、遠回りなのに来てくれてありがとうね。凛花さんはほんとうに花が好きなのですね。』 『だって綺麗だし、色んな顔や匂いがあって、飽きないんだもの。』 確かに花は好き。 でもそれ以上に、いつも穏やかで、優しいお婆ちゃんのことが、もっと好きだった。 『今日の新しい花は何?』 お婆ちゃんの花屋には、不思議なことに、毎日新しい花が咲きました。 『今日はね、こんな花が咲きましたよ。ほら。』 そう言ってお婆ちゃんは、小さな鉢植えを持ってきました。 青々とした葉の先に丸い花。 淡い赤の花びらは、黄色に縁取られていました。 『可愛い・・・キク?』 『確かに、菊に似ていますね。この花は、百日草と言って、菊の友達なんですよ。』 この頃の私は、お父さんに買ってもらった花の図鑑を毎日見ていて、既にいくらかの知識はありました。 『そうなんだ・・・。でも、どうしてかな。』 『凛花さん。どうかしましたか?』 『うん・・・。こんなに可愛くて綺麗なのに、この花を見てると、何だかとても寂しいの。』 私は時々、花を見てると色んな感情がわいて来る、変な子でした。 『やっぱり、凛花さんには分かるのですね。百日草の花言葉は、「亡き友を偲ぶ」というものです。この花には、大切な友達を亡くしてしまった、その想いが込められているのです。』 それを聞いて、私は余計に寂しくなりました。 『あなたには、これからいろんなことを教えてあげましょうね。』 花を見つめる私の頬を、いつの間にか涙が伝っていました・・・。
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