─偽りの不良─

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怒った事がないのではなく、本当は怒り方が分からないのかも知れない…………… だけど、あの時、彼らに、いや…彼に……… どうしても、許せない、許してはならない事を言われた気がする……………………… でも、それを考えようとすると、まるで、思い出す事を拒んでいるかのように………頭がズキズキ痛んで来る………………… ただ、この惨状の原因は自分なのだ…と、言う事も段々と自覚し始めている………… 無意識の中、我を忘れる程の怒りで、自分の中に眠る…恐れていた感覚が覚醒したのかも知れない…………… 悪い事に、何かの役に立つかと… この学校に通う事になった時から、格闘技やアクション映画のテレビなどを見ていた事が、覚醒に一役買ってしまったようだ……… テレビを見ていた時のワクワク…………… 結局、自分が大嫌いだった人種……それが、自分の中にいる事に気付いていたから……………… ずっと、自分の事が一番嫌いな……僕は…彼らを嫌っていたのかも知れない……………………… そして、あれこれ考えながら、ふと、バリバリに割れた鏡に映る自分を見た瞬間。グズグズと考えている場合ではない事に気付いた。 血塗れで、小刻みに震える拳は…硬く握られ解けず…………………… 体中も痛い……………………………… が、元々の体格、丈夫さで、なんとか体は動く……………… そして、動ける事を確かめ、とにかくその場を早く立ち去ろうと、バラック小屋を出ようとした時。 「えっ…ぇ… キャ―!?」 悲鳴と同時に、僕の足元へボールが転がって来た。体育館内で部活中のバレー部のボールが、開放された扉から、外に飛び出し、それを拾いに来た女子部員に目撃された…………… 女子部員は、腰を抜かし、アワアワしている……… 僕は、思わず、手を差し出しそうとしたが…………………… 「血、血、血が……………」 女子部員はぎょっとした表情で言った。僕は自分の手が血塗れな事を一瞬、忘れていた……… その時、硬く握られた拳や震えが、自然と解けている事に気付いた。 と、僕が手に気をとられている間に女子部員は走り去ってしまった………………
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