─偽りの不良─

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立ち尽くすしている時間は、現実ではほんの数秒だったに違いない、が…… その時… 僕自身は、数分以上、数時間にも、感じ…真っ白になった頭をフル回転させようと精一杯、考え続けた。 しかし、中々、状況が把握出来ず、頭の中はパニック状態……………… その末に……………………… 少しずつだけど、断片的にうっすらと消えた記憶が甦って来た…… 先輩達に呼び出され…ついて行った。 そして、自然と、入るのを拒んで、体が硬直した僕を先輩が後ろから蹴り飛ばし、無理矢理バラック小屋に入れられた…… まるで、細切れになった、途切れ途切れの動画を見ているようだ。しかし、声は全く聞こえない…………… とても古い、ノスタルジックな無声映画を見ているようだ…… すると… 蹴り飛ばされ、入口から、倒れ込むようにバラック小屋に入った僕を、何人かの不良達が羽交い締めにした……………… ─────────────────── そして、大小、沢山の衝撃を受け始め………… 本当はそこに至るまでに、何か言葉を交わしていた気もするが、その辺の記憶は薄ぼんやりしていて、余り覚えていない………… ただ、手には沢山の血と傷…そして、鈍い痛みが残っている……………… 昔から、嫌な予感がしていた………………………………… 自分の中に眠る、感情………… 正直言って、手についた血も鈍い痛みも、悪くないと思う自分がいる…………… 元々、テレビで見た事がある格闘技ヘビー級選手並みの僕の体…幼い頃から、少し力を入れただけで、何かしらを壊す。 そんな事を繰り返し、両親にも迷惑をかけて来た……………… 友達のものを壊してしまった事も数知れない…だから、僕は、いつからか、ものではなく、もっと大切な何かまで、壊してしまう事を恐れるようになっていた………… 臆病に慎重に生きて来たんだ…………………… だから、テレビで格闘技やアクション映画などを見た時は……もしも僕が本気になって人を殴ったら、どうなるのか…………… 心の奥底では、ワクワクしている…そんな自分にも気付いていた………… そんな自分が嫌いで嫌悪もしていた………………… なぜなら、人を傷つける暴力も嫌いだし、それを自慢するかのように回りを巻き込む人間が大嫌いだったから…………… だから、短い人生、本気で怒った事は一度もない…………………………
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