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顔にほんの一瞬陰りができたが、ラビリスはすぐに冷静な顔に戻った。
「もうよい、もうよいわ!!
父上の意見などもう聞かぬ、ソゾハカなど空想のモノでしかないんだ。
そんなモノを護ってどうするのだ! 父上はとんだ腰抜けだな。」
「なんじゃと!」
互いに見つめ合い睨み合い、2人の間には見えない火花が飛び散っていた。
そんな2人に、美しく透き通る声が聞こえてくる。
「ラビリス、父様。
どうかこの場でそんな争いはやめてくださいまし、ミズキが泣いております。」
そう言ったレイルの腕には、ミズキが抱えられていた。
それを見て2人共すごすごと口籠もってしまう。
美しく清楚であるが、その声の静かなる迫力、いや、殺気には圧倒されるものがあった。
「ラビリス、貴方はミズキはどうするのです。
こんな幼い子を残して戦争に行き、死んでいくのですか?
それこそ、我が地の神タムティル様への裏切りに他なりません。
それに、ソゾハカは決して空想の産物なんかではありませぬ。」
レイルは静かにそう断言していた。
「だが! なればこそミズキに被害が及ばないためにも、戦争に行き勝つ必要があるのだ。レイル……」
レイルはキッとラビリスを
睨み付け、口を重々しく荒々しく開いた。
「そんなの言い訳にしかなりません。
なぜ、なぜ分からぬのです。」
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