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ラビリスは立ち上がり、レイルに背を向け小さく語り掛ける。
「すまぬなレイル、この戦いはきっとやらねばならないのだ。
最後まで迷惑をかけたな……すまなかった。」
ラビリスはさっきまでの口調とは一変していた。
覚悟は変わらないとでも言うように、穏やかな口調になっている。
レイルはそれを敏感に感じとったのか、ラビリスを思いっきり……力の限り叩いた。
「そんなに行きたければ、勝手に行って死んでいきなさい。」
レイルはラビリスを無理矢理部屋から追い出した、我慢できずに嗚咽をもらしながら……
「すまぬな、レイルさん。
ワシの息子は人一倍頑固で、時にワガママで正義感が強いんじゃ。」
そう言っているパスタルの目にもうっすらと、光るものが見え隠れしていた。
「ワシはあのバカ息子の親じゃ。
神が一番などと言っても、アイツが動いた理由は家族の為じゃ、それだけは分かっておくれ。」
レイルの頬には大粒の涙が溢れ、止められなかった悔しさと、全てを分かっていながら、きちんと送り出せなかった後悔とが胸を締め付けていた。
「はい……
父様、分かっております。
ラビリスの……夫の護りたい者も決心をつけさせたものも、他ならぬ私達なのですから。」
「すまぬなあんなバカ息子で……なぁ」
レイルは首を大きく横に振り、涙を流しながらも大切ななにかを思い出すように微笑んでいた。
「いえ……
あんなに優しくて、正義感溢れるラビリスの妻になれて私は……レイルは幸せでございました。
世界一……幸せ者でございます。」
それから月日は経ち、二年の後に、神虐第一次大戦は終えた。
武神が終決をもたらしたとも言われているが、戦争に行ったものは誰も帰ってこなかった為、真相は分からない。
ミズキ3歳の時の桜降る春であった。
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