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ドーン ドーン ドーン
ドーン ドーン ドーン
ドーン ドーン ドーン
家に掛けられている古いねじ巻き式の時計が、9時の音を鳴らした。
いつのまにか、もう夜の9時を回っている。
この時計は、トラスシファド・ゴウラ・パスタルが作った時計。
パスタルのその名を知らぬ者は……沢山いたらしいが、一部には熱狂的なファンがいるらしい。
パスタルが作る物には不思議な物がよくある。
この時計は午前と午後の音が違うのだ。
午後はドーンとなるのに対して、午前はピーポと言う不可解な音を放ち、十二時には鳩ではなく猫がニャーォとなくオマケ付きだ。
こんな、意味の分からない発明が問題を呼んでしまうのは、まだ少しばかり後の話である。
一方、そんな時にミズキは目を覚ました。
頭の痛みは先程よりもましだが、痛みは抜けきっていない。
痛み残る頭を我慢しながら、ゆっくりと目蓋を開くとその瞬間、ミズキがビクリと体を硬直させる。
「えっ……えっ……えーっ!」
なんと、目の前には助けた少女の顔があたっており、特に唇が軽く触れ合っていたのだ。
ミズキは慌てふためいた。
小さい頃から爺と母の顔しか記憶にないのである。
そんなミズキは、急に空から降ってきた少女にファーストキスを奪われたのだった。
ミズキがそんなこんなで慌てふためいていると、少女の指がピクリと動いていた。
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