希望持つ少年

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今でこそミズキ村という立派な名前があるが、昔は名前などなかった。 そう、言うなれば無名の村である。 その村には、妙な言い伝えがあった。 神ハコノ地へ降リ立ッタ、ソシテ村の中心に一つの、チイサナチイサナ種を植え付ける。 開花した時、運命を変えるモノとナルダロウ。 名ヲ創愡鵬華…… 蕾では、すぐ枯れてしまうかもしれない、だがこのハナにはきっと、守ってくれるハナが何個も咲き誇るだロウ。 春の綺麗な新緑が、朝露に濡れ、朝の日差しに照らされながら、輝いている森の中。 1人の子供が眠っている。 眩しいぐらい綺麗な銀髪に、少し日に焼けた肌。 パッと見は少女とも思われるような、綺麗な顔立ちの少年が目蓋をゆっくりと開ける。 天から降り注ぐ、暖かい光と澄んだ空気を身体全体で浴びながら、半身を起こし背伸びをする。 開けた目蓋からは銀色の瞳を覗かせていた。 「うーん、よく寝たなぁ。」 まだ少し眠いのだろうか、目元をこすりながらもポケットに手を突っ込み、小さな鈴を取出して小刻みに横に振り始める。 鈴の音は静かな森にはよく響いていた。 チリン、チリン、チリン。 その音はまるで優しい歌声のように美しく、その音はまるで時に生命を与えるよう躍動感に溢れている。 そんな音が森に響き渡っていく。そんな音を聞いてか、森が妙にガサゴソと音を立て、鹿や兎、ライオンや熊などの森に住んでいる動物達が、いつの間にか、少年を取り囲んでいた。
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