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しかし、少年は驚く気配を全く見せない、それどころか傍にいたレバルスをなぜながら、ふと立ち上がる。
レバルスとは、四本足で歩き漆黒の毛に覆われた動物であり、気性が荒く、決して人間には懐かない。
だが、懐かないはずのレバルスはさも気持ち良さそうに、目を閉じてウトウトとしていた。
この光景を学者が見たらきっと驚くだろう。
だが少なくとも少年には、そんな常識は必要がない。
そこには目に見えそうな程に濃い、確かな信頼関係が見えてくるようだ。
少年はレバルスに……
いや、森に住む動物達に語り掛けていた。
「おはよう皆、今日の風は穏やかだね。」
少年が言い終わると、全ての森の動物達は返事をするように、穏やかに鳴いていた。
少年は、うんうんと頷いてもう一度背伸びをし、肺に新鮮な空気を取り入れる。
「うぅーん、今日は何しよっかな?」
少年はそう言って森を抜けていく。
しばらく歩き、完全に森を抜けた途端、目の前には絶景が広がっていた。
桜が風にのり流されていく……
まるで桜でできた河でも見ているかのような、錯覚にでも陥りそうな風景だ。
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