Steer

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魔界。 昼より夜の割合が多く、1日の内の20時間以上は暗闇に包まれている世界。 「ふふふ、渡さない……あれは私が必ず手に入れる」 丸い球体のような部屋。 その中央にある……まるで宙に浮いている様な玉座に座る少女。 少女は玉座の手摺に肘を乗せて、その手に顎を乗せ脚を組み、その艶やかな唇を妖艶に吊り上げて前にある水晶玉を見ていた。 「イヴァ様。この少年で良いのですか?」 「私だって年が同じくらいの者が良いわ。それにあれは間違いなく星界で指折りの強さよ」 「私は……少なからずそんなに強いとはとても思いません」 執事らしき女は勿論椅子には座っておらず、球体のような部屋の中で立っている。 その姿は宙に浮いている様だった。 「確かにあれは弱い。だけど確実に強くなるわ」 執事のような彼女は無表情ながらも喜んでいた。 本当に久し振り見たその嬉しそうな少女の姿に、少し安堵した。 その少女の表情は、他人が見たら悪巧みをしている……またはただ妖艶に微笑んでいるようにしか見えない。 年相応に少女の様な喜びを表に出している何て、長い年月を一緒に過ごした者にしか分からない。 .
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