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しかし、仙人だったり何かの達人でもない俺には考えたって分かるはずもない。
知らない事が恐怖であったあの頃が懐かしい。
毎日に本を盗み見して知識を増やしていた……今思えば、ただ本が好きだったのかもしれない。
まぁ、その時の知識がかなり役に立ったのは事実だし、知らない事は怖い事には変わりはさしてない。
「そう言えばそれは何なの?」
「……ん?」
俺が考え事をしてる間に俺に跨がって……いわゆる馬乗りをしていたイヴァは、上半身裸の俺の右胸を指差していた。
「コレか……ただの呪いだ」
「呪い?呪術なら私も分からないわね……」
右胸に刻まれた忌々しい十字架……見方によっては格好いいお洒落にも見えなくはないそれに、俺は感謝と怒りを覚える。
「呪術とはまた違う類の魔術らしいぞ」
「……ふーん」
さして興味なさげにイヴァは十字架を指でなぞる。
その指から伝わる暖かさとこそばゆい感じが気持ち良くもある。
「どんな呪いなの?この十字架は……」
「さぁ?いずれ分かる日が来るんじゃないか?」
俺の返答にイヴァの綺麗な顔が不満そうに歪む。
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